盤外戦術
- 雨
- 2021年8月1日
- 読了時間: 4分

毎日、暑い日が続いていますね。皆様いかがお過ごしでしょうか。特に近況報告もないのでご挨拶から始めてみました。最近は創作について考えることが少なくなったのですが、ある方のTwitterを見てふと感じたことがあり、今回はそれについて書いていこうと思います。その方は有名人でも私の知り合いでもありません。時々、私は他人のTwitterをランダムに眺めることがあるのですが、そんな不特定多数の創作者の一人です。
私は常々、創作者同士の「ギブアンドテイク(感想のやりとり)」が苦手だとブログで語っている。何なら前回の記事にもそう書いているし、ここ数年はずっと壁打ちなので、書き手から感想をもらってもそれに対するお返しはしていない。ただ、自分が素敵だと思った作品に対しては匿名ツールやROM垢を使って感想を送ることがある。純粋に感想を伝えたいだけで交流が目的ではないし、相手に「お返ししなきゃ」と思わせてしまうのが申し訳ないからだ。
特に二次創作の世界に多いと思うのだが「自分の作品を読んでもらうためにはこちらから反応しなくてはならない」という考え方がある。自分の存在をアピールするために他の創作者の作品をRTしたり、せっせと感想を送ったりという行動を取ったことがある人は少なくないと思う。もちろん、本当にその作品が素敵だと思ったからそうしている人もいるだろうが、あわよくば自分の作品に目を向けてもらいたいという下心がある人も確かにいる。
もともと、二次創作は「同じものを好きな人同士がお互いの創作物を通して交流する」みたいな傾向、というか文化である。そう考えれば、それぞれの創作物に対して感想を送り合うことはおかしなことではない。リアルの人間関係と同じでお世辞を言ったりすることもあるだろうし、相手を傷つけないように言葉を選ぶ。そこに、相手に気に入られたいとか、自分を認めて欲しいという感情があるのは当然のことだ。
とある二次創作者のブログを読んで知ったのだけど、心理学用語で「返報性の原理」という言葉があるらしい。簡単に言えば、相手から施しを受けた時に「お返しをしなければ」という気持ちになる心理作用のことだ。創作におけるギブアンドテイクが全てこの心理作用にあてはまるわけではないが、結構な数の創作者がこの心理を頭の片隅において交流を行っているような気がする。
感想が欲しいという気持ちは私にも痛いほどわかる。「面白かったです」とか「素敵です」という言葉は本当に嬉しい。少し前から、様々な事情を抱えている創作者の方達を観察してきて、自分の存在に気づいてもらうために、お返し目当てで感想を送ることはそう悪いことではないのかもしれないと思うようになった。個人的に「感想は自発的なものでなければ意味がない」という考えは変わらないけれど、ケースバイケースで、そういう方法を取るのもありかなという気がするのだ。
ただ、作品の面白さだけで勝負するのではなく、こういった盤外戦術を仕掛ける場合は、相手に送る感想にも真剣に取り組んだ方が良い。なぜなら、創作者は自分の作品に対する感想を素直に受け取る人ばかりではないからだ。私のように長い間書き手をやっていると、言葉の裏を読むという厄介な悪癖が身についてしまうことがある。何となく、本音の感想とそうでない感想が感覚的にわかったりもする。
どうしてわざわざこんなことを書いているのかと言うと、とある書き手の方が「作品だけでなくそれを作った人にも目を向けられる人はすごい。自分の努力をわかってくれて嬉しい」とつぶやいているのを見かけたからだ。これは一見、微笑ましい光景にも受け取れるが、作品の優劣とそれを作った人の人格に相関関係はない。とんでもない屑(つぶやいていた方が屑という意味ではない)が感動的な作品を生み出すこともあるし、寧ろ、少々癖がある人間の方が良い物を作れたりもする。
純粋に作品の面白さや素晴らしさについて言及した後、創作者を労うつもりで彼・彼女の努力を褒めるのなら何も問題はない。しかし「作品に関して何も言うことがないな……とりあえず作るのに時間がかかってそうだからそこを褒めとくか」みたいなケースもある。何と言うか、私は純粋に作品のことだけを褒めてくれる人の方が信用できる。本当にその作品が面白いと感じたなら、作者のことは自然と二の次になるものだ。
読者にとって、作者がどれだけ努力してるかどうかなんて関係ない。目の前にある作品が面白いかどうか、それが全てだ。だって、小さい子がお母さんの似顔絵を描くのとはわけが違うのだから。
とまぁ、勢いに任せて長々と書いてしまったが、後半に書いたことはひねくれ者の戯言だと思ってもらった方が平和なのであまり気にしないでいただきたい。オリンピック開催の直前に色々あったことも踏まえ、最後に言っておきたいことがあるとすれば、「作品には罪がない」ということだ。国家が絡むようなプロジェクトでは人間性が重要視されて然るべきだが、マジで芸術と人間性は関係ないんですよ。巨匠や文豪と呼ばれる人達にも相当ヤバい人はいます。いやマジで。
Commentaires