あなたが誰であろうとも
- 雨
- 2019年3月24日
- 読了時間: 3分
更新日:2020年10月18日

二次創作において、自分の好きな小説を書いている作者に興味を持つ人は案外少ないと思う。かく言う私も作者の性別、年齢、職業、その他諸々について知りたいと思うことはないに等しい。その人の作品が自分の好みストライクでどんなに素晴らしいものあってもそれは変わらない。「絶対に嫌」とまでは言わないけれど、知らずに済むならその方が好ましい。
作者の人となりを知って幻滅したくないというよりは、単純に興味が湧かないのである。プロの作家についても似たところがあって、例えば全ての作品を読破しているような作家でもWikipediaの情報を軽くさらうくらいで十分である。もっとも、エッセイを書いている作家なら必然的に人となりを知ってしまうことになるのだが。
プロの作家の場合はその人の経歴やゆかりの場所が作品に反映されていることがしばしばあるので、作者自身を知ることでそういったものを見つけることができるという楽しみがある。しかし二次創作の場合は、作者自身の経験が色濃く反映されているとわかると「あぁ……うん」と微妙な気持ちになってしまう。
BL界隈では「自分の出産・子育て経験が組み込まれている作品は無理」という意見をよく聞く。今は「オメガバース」なる男性でも妊娠・出産ができるという特殊性癖が流行っているようなので、そういう作品も多いのだろう。それにしても、本来なら女性にしか経験できないことをBLで描く必要性があるのか、私にはよくわからない。
いくら特殊性癖とはいえ、やはりキャラクターに作者の影が重なって見えると読者側はあまりいい気がしない。作者とは全く別人格であるはずのキャラに、作者の日常や生活感を乗っけられても困る。自分の思想を全く反映させるなとは言わないが、他人が作った世界観を借りて物語を書いているのだから、常に客観的な視点は持っておいていただきたい。
それとは別に、作品がどんなに素晴らしくても、作者の性格がクズだったら読む気が失せるというケースもある。「好きな書き手のTwitterを見て幻滅した」というのもまたよく聞く話だ。淡々と作品だけを上げ続ける作者であればいいが、私生活のあれこれをつぶやくタイプの作者だと、知りたくない情報まで勝手に流れてきてしまう。
作者と作品をきっぱりと分けて読めるという人であれば、今まで書いてきたようなことは特に気にならないのかもしれない。私自身、この記事を書くまであまり深く考えたことはなかった。しかし、今改めて考えてみると「小説を読む」という楽しみを作者によって奪われることがあるなんて、何だかおかしな話である。
好きなのは小説であって、作者ではない。もちろん作者の考えに共感したり、素敵な人だなと思うことはある。しかし私の場合、そういうのは主にプロの作家に対する感情であって、二次創作で作者に何か期待するということはない。「知らぬが仏」という諺があるように、たとえそれがどんな人物でも、こちらが認知していなければ作品に余計な先入観を持たずに済む。私にとって「作者に興味がない」ということは、ある意味、誉め言葉なのである。
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