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去る者は追わない

  • 執筆者の写真: 雨
  • 2019年3月11日
  • 読了時間: 4分

更新日:2020年10月18日



情熱はいつか冷めるものであり、永遠はこの世界に存在しない。これは男女の愛の話ではなく、腐女子とジャンルの話である。何か、名言っぽいことが言ってみたかっただけです。あまり気にしないでください。


私が今のジャンルで活動を始めてから一年半近くが経とうとしている。その間に書いた小説は約80作、一作あたりの文字数は2000字から20000字といった具合だ。二次創作を始める前、一次創作をメインとしていた時からずっと短編を書いていたこともあり、日常を切り取る感じの二次小説ではこれくらいの長さの話が一番書きやすい。


おそらく、今のジャンルで私は多作な方である(私は読むジャンルと書くジャンルが別なのできちんと確かめたわけではないが)。いくら文字数が少ないとはいえ、今年中には確実に100作を超えるだろうなと思うと自分でもちょっと怖い。「暇かよ! どんだけ書いてんだよ!」と心の中の自分が時々ツッコミを入れてくる。


今まで明記していなかったが、私は推しCP以外にも3つのCPの話を書いている。「BA」が推しCPで、その次は「CA」と「DA」、私にとっての癒し担当が「EF」という構図になっている。因みに、CPの好みはあるが地雷は特にない。ただ「Aだけは右側にしか見えない病」にかかっているので、Aが左側だとモヤモヤした気持ちになることは否めない。


複数のCPを書いていると「CP固定」の人には敬遠されると聞いていたのだが、実際はそうでもなかった。例えば「元々CAだったけどあたなの小説を読んでBAも好きになりました!」と言ってくれる人が割とたくさんいた。そういう時は「してやったり」とほくそ笑みながら、それを悟られないようにクールな返事を返していた。


pixivで言えば、私の小説に毎回ブクマをしてくれる方が何人かいて、とてもありがたく思っている。プロの作家でもないのに「ファンです」と言ってくれる人もいて、恐縮してしまう反面「えぇ……照れる!」と脳内で喜びを噛みしめている。そういった読者の反応は純粋に嬉しいし、小説を書くモチベーションにもなっている。


ここまで読んで「何だ、今日は自慢話か?」と思われた方もいるかもしれないが、話はそう単純ではない。確かに、小説に対して熱烈なファンレターのようなメッセージをもらった経験が私にはある。「最高です」とか「一番好きです」というコメントをもらったのも一度や二度ではない。だがしかし、である。


この一年半の間に、そういった読者が私の元から去っていったのもまた事実である。単純にジャンルに飽きたのか、私の小説が気に入らなくなったのかは定かではない。仕事が忙しくなって小説を読む暇がなくなったのかもしれないし、もしかしたら、ROM専だった人が書き手になって、他の人の作品が読めなくなったということもあったかもしれない。


以前の記事でも書いたが、pixivにおける「マイピク」のような存在が私には300人ほどいるので、その一人ひとりの動向を逐一チェックするようなことはしていない。毎回反応をくれる方の名前くらいはさすがに覚えているが、それ以外の方はさっぱりといった感じである。私が自分から交流することはないし、読者にはほぼ無関心だと言ってもいいだろう。


そうは言っても、自分の小説に熱狂的な反応を見せてくれていた人が突然姿を消したら、私だってそれなりに落ち込む。二次小説に限らず、あれだけ好きだったものに飽きてしまうという経験は自分にもあるのに、そう簡単にスパッと気持ちを切り替えることができない。まぁ、記憶は必ず薄れ、いずれ思い出さなくなることに変わりはないのだが。


古い読者が去れば、また新しい読者がやって来る。『スタンド・バイ・ミー』という映画で、大人になった主人公が過去を振り返るシーンがある。濃密な少年時代を過ごした友人と離れ離れになった後「それからの友人はレストランの客のように入れ替わった」と彼は語る。


この映画を初めて見た時、私はまだ小学生だった。それから成長していく過程で、私は彼の言葉を痛いほど理解した。現実の人間関係でも人との繋がりはその程度のものだ。ましてや、どこの誰かもわからない、顔も見えない相手とずっと付き合っていけるはずもない。もちろん、中には例外もあるかもしれないけれど。


書き手の私がシェフだとすれば、読者はレストランの客だ。最近、そのくらいの距離感がちょうどいいのではないかと思っている。たまたま入った店を気に入り、その客は何度か店に通うかもしれない。しかし、大半の客はそのうち訪れることを止めてしまうだろう。それが普通だと思うし、常連だけで店が成り立っているわけでもない。


もう二度と店に来ることがなくても、料理を食べた後で「美味しかった」と言ってくれればそれでいい。私は「またどうぞ」と軽く微笑んで客を送り出し、いつものように翌日の仕込みを始め、店を開け続ける。客のためではなく、自分のためにそうする。もし、長い間音沙汰がなかった常連客が再び店を訪れたら、私は「お久しぶりです」と笑顔で彼らを迎えるつもりだ。

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