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彼女の宝石

  • 執筆者の写真: 雨
  • 2021年2月7日
  • 読了時間: 3分


少し前の話になるのだが、私には一次創作で薄く繋がっている書き手の方が一人だけいる。Twitterで言う相互フォローのような関係で、一度だけ「はじめまして」的なメッセージのやりとりをして、それ以降は特にコミュニケーションは取っていない。時々、彼女は私の小説をブックマークしてくれるので、「あ、読んでくれているんだな」とわかる感じだ。


彼女からフォローされたことをきっかけに、私は彼女の存在を認知するようになった。現在、彼女は私が全く馴染みのないジャンルの二次創作をメインに活動している。なので申し訳ないと思いつつ、私の方は彼女の作品を読んでいない。しかし、彼女も過去に一次創作の小説を投稿していたので、匿名ツールを利用して私から感想を送ったことがあった。


身バレ防止のために詳細は省くが、それからなんやかんやあって、彼女とは現在も細い繋がりがある。今日ブログに書こうと思った内容は、その彼女に関することである。少し前、私が気紛れに彼女のTwitterを見た時、彼女がそこで呟いていた言葉。「結局、私には才能がない」。


私が知る限り、彼女は「評価されていない書き手」というわけではないと思う。確かに評価数は少ないかもしれないが、それはジャンルが(たぶん)マイナーだからであって、彼女と同じジャンルにいる他の書き手の方も似たり寄ったりな感じだ。


因みに、彼女の文章が下手かというと全くそんなことはない。読みやすい文章だし、物語の内容もすんなりと理解することができる。だから、私は何故、彼女の自己評価がそんなに低いのかいまいちよくわからない。もしかしたら目標値が高く、書き手として遥か高見を目指しているからなのかなと思ったが、どうやらそういうことでもないらしい(あくまで私の個人的な印象です)。


一次創作をしていると、自分と誰かを比べて落ち込むということはほとんどない。純文学とかミステリーとか、一次創作にもジャンルというものは存在するが、アマチュアからプロまで裾野が広く、同ジャンルであるという意識が乏しい。ネットの片隅で細々と活動している私としては「ジャンル=自分」という感覚になってしまっていて、要するに、自分がどれほどの書き手であるか、他人からどう見られているかということにあまり関心がない。


彼女に対して「そんなに悲観することないのにな」と思っていても、私がそれを伝えるのも(上から目線で言っているようで)何か違う気がする。彼女が誰かの才能に打ちのめされてしまったのか、自分を客観的に分析した結果そう思ったのかはわからない。どちらにせよ、自分には才能がないと悟った上で、彼女はこの先も創作を続けていくのだろうかと気になっている。


才能という絶対的なものに対してどう立ち向かっていくのかは人それぞれだ。誰かに「勝ちたい」と思って小説を書く人がどれくらいいるのかはわからないが、それが一つの動機になっているのなら悪くない。たぶん、何かを諦めてしまうよりは。そこにどんな理由があったとしても、彼女には小説を書き続けて欲しいと思う。私が初めて彼女の文章を読んだ時、キラリと光るものを感じたのは確かなのだから。

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