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楽しくないのなら書くことは止めた方がいい

  • 執筆者の写真: 雨
  • 2020年8月21日
  • 読了時間: 4分

更新日:2020年10月18日



ここ最近、ブログ記事の出だしが「前回」とか「今回」ばかりになっていたことを地味に反省していたりするのだが、今回は久しぶりに執筆関係の記事を書いてみようと思う。少し前から、小説の資料のためにTwitterを時々眺めている。アカウントを作ったわけではなく、ブラウザから気になる情報をキーワード検索したり、Twitterを使用している人の傾向みたいなものを観察している。


ネットサーフィンのごとく気になったアカウントのツイートを次から次へと流し読みしていた時、とある字書きの言葉が目に留まった。その人はゲームジャンルで二次創作の小説を書いているらしく、同人誌なども作ったりして、本格的に創作活動をしている人のようだった。そんな彼女(たぶん女性だと思う)がこんなことをつぶやいていた。


 “私は書くという行為を楽しいと思ったことは一度もありません”


マシュマロの質問に答える形で、彼女は自分の小説がほとんど読まれないことや、同ジャンルで反応をもらえないという現状を嘆いていた。あまり詳しく書くと彼女が誰であるか特定されてしまいそうなので止めておくが、文面からは疲れているというか、もう期待することを諦めているような印象を受けた。


二次創作において、小説よりも漫画やイラストの方が好まれるということは私も理解している。漫画と小説で同人誌の販売数にもかなり差があると聞いているし、はなから「小説は読まない」という人も少なくはない。キャッチーなイラストに対して、小説は一目でその良し悪しがわかるものではないし、反応が鈍くても仕方ないよなぁとも思う。


しかし同じ小説ではなく、漫画やイラストと比べてしまうという点においては共感できない。「二次創作」というカテゴリーは同じでも、絵と文章は同列で語られるべきものではない。彼女のTwitterには「漫画やイラストしか必要とされてない」というようなこともつぶやかれていたが、その現状と小説を書くことは切り離して捉えるべきではないだろうか。


彼女のツイートを見て、単純に「え、書きたいから書いてるんじゃないの?」と、私は少し困惑してしまった。好きなジャンルの二次創作小説を書くのが楽しくて、それを形にしたくて本を作っているのではないのかと、すぐには彼女の心情を理解することができなかった。


Twitter上で、彼女は小説を読んでもらえないことや反応をもらえないことに悩み、売れ残った同人誌の在庫を自分の手で処分しなければならない辛さを語っていた。彼女にとっての創作活動は喜びよりも悲しみ、いや苛立ちと言った方がいいだろうか、とにかくネガティブな感情に支配されていて、必要以上に卑屈になってしまっていた。


周りの反応で、自分は必要とされていないと感じてしまうのは確かにきつい。読まれない、反応されない、本が売れない。それは全て、小説を書くのを止めてしまおうと思う理由になり得るものではある。しかし「書くという行為を楽しいと思ったことは一度もない」のなら、何故、彼女は創作活動を続けているのだろう。


それなら、始めから書かなければいいのにと思う。文章を書いて生計を立てているプロとは違って、二次創作は決してやらなければならないことではない。冷たい言い方だが、そんなに辛いならさっさと止めてしまえばいい。彼女の真意を明確に判断することはできないけれど、周りと比べたり他人の反応を気にする以前に、書くこと自体に「好き」という感情がないのなら、小説を書く意味なんてない。


私だって、一次創作ではほとんど反応をもらえない。まず読まれないし、自分の二次創作と比べても雲泥の差がある。今まで書いた小説が特別優れているわけでもない。それでも私は文章を書くのが好きだし、書きたいから小説を書いている。だから、楽しんで書いた小説に少しでも反応をもらえると嬉しい。「あなたの小説が好きです」というたった一つのコメントで、自分の頭の中にあった物語を小説という形にして良かったなと素直に喜べる。


彼女のツイートに対して覚えた感情が、怒りなのか同情なのかよくわからなかった。だが、こうして文章にしてみると、そのどちらでもないような気がした。一つわかったことがあるとすれば、「小説を書く理由」は人それぞれであるということだ。中には私が理解し難い理由もあって、それについて反論するような文章を書くことは、たぶん間違っているのだろう。そう結論づけてはみたが、やはり私はこう思うのだ。そこにどんな理由があったとしても、書くという行為を楽しいと思えないのなら、小説は読むだけにしておくべきだと。

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