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無反応という罪

  • 執筆者の写真: 雨
  • 2019年3月7日
  • 読了時間: 4分

更新日:2021年3月10日



趣味で小説を書いている人がネットに自分の作品を公開するのは何故か。人それぞれに理由はあると思うが、大半の人は「自分以外の誰かに小説を読んでもらいたい」という思いがあるからではないだろうか。また、読んでもらうだけでなく、自分の小説がどれほどのものであるか評価して欲しいとか、感想をもらいたいという気持ちを多くの人が持っていると思う。


いつものようにpixivを例にすると、二次創作の場合、閲覧数に対して10%ほどブックマークがもらえればその小説は高評価であると言えるらしい。つまり100人が閲覧したとして、そのうちの10人がブクマをすればその小説は出来がいいということになる。


確かに、小説を面白いと感じていてもアクションを起こさない人は少なからずいるので、10人に一人が気に入ったという意思表示をするというのは結構すごいことなのかもしれない。もちろん、旬ジャンルか斜陽(人気が下火になった)ジャンルかで違いはある。二次創作ではジャンル、CP、キャラクターの力が小説の人気に大きく影響しているので、高ブクマの作品が無条件で優れているとは言い難い。


小説の完成度と評価の話はさておき、今日は読み手側のマジョリティーである「無反応な読者」について書いていきたいと思う。閲覧数100のうち10人がブクマした小説があったとして、何もアクションを起こさなかった90人の話だ。


他人の作品に「いいね」をしたりコメントを残したりする行為は、その人が一度でも作品を作って公開したことがあるかどうかによって意識が大きく異なっている。ROM専だった人が書き手に回った時、たった一つのブクマやコメントがどれだけ創作意欲に影響するか初めて理解できたというのはよく聞く話だ。


私は(一次創作で)最初からずっと書き手側だったので、読者からの反応がありがたいものであることは早い段階から理解していた。ROM専として二次創作を閲覧し始めた時も、ブクマは増えすぎると管理が大変になるので厳選していたが、面白いと思った作品には必ず「いいね」ボタンを押すようにしてきた。


自分がその作品を気に入ったから、また読み返したいと思ったから。いいねやブクマをするのはそういったシンプルな理由からだ。それに加え、作者にエールを送りたいという気持ちもある。私一人のアクションが作者に大きな影響を与えることは稀だと思うが、それでも「ここにあなたの作品を好きな人がいます」と伝えたいと思うことがある。


作品に対して無反応な読者にも、彼・彼女達なりの理由が色々ある。雑食だったり、好きなジャンルがコロコロ変わるからという理由で、自分の形跡を残したくないという人もいるかもしれない。自分の存在を作者に知られたくないという人、単純にいいねやブクマをする習慣がない人、コメントをしてみたいけどなかなか勇気が出ないという人。


言うまでもなく、面白くないものに対して無理に反応する必要は全くない。書き手が読者に「何か反応しろ」と強要することはできないし、アクションは自発的なものでなければ意味がないと私は思う。反応がなかったらなかったで「次はわざわざ感想を送りたいと思うほどの小説を書いてやろーじゃねーか」と逆に燃えることもある。


無反応の90人だって、別に悪気があるわけではないと思う。たくさん評価をもらっている人に対して、自分がアクションを起こさなくてもいいだろうという心理になるのも理解できる。何となくタイトルに入れた「罪」は意識的なものではなく、無意識の罪だ。自分一人が反応しなかっただけで誰かを傷つけることになるなんて、ほとんどの読者は気づかない。


「評価なんていらない」と潔く言える人は別として、何も反応しないフォロワーがムカつくとか、いつもタダ読みしやがってとか、卑屈になってしまう気持ちもわかる。私だって反応が少なければそれなりにブルーになる。たとえ、書くこと自体が一番大切で、自分が好きで勝手にやっていることでもそれは変わらない。


結局、SNSの使い方なんてその人次第なのだけれど、もし自分が他人の作品から何らかの感情を受け取ったなら、たまにはそれを相手に返してみてはどうだろうか。画面を指先でタップするだけだ。何の労力もいらない。90%は自分の意思で、残りの10%は、誰かにエールを送るつもりで。

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